臨床研究

ミクログリア細胞株(BV-2)におけるデュロキセチンのLPS誘導NO産生抑制の作用機序解明

(Duloxetine ameliorates lipopolysaccharide-induced microglial activation by suppressing iNOS   expression in BV-2 microglial cells)

 中谷善彦、矢口真菜美、荻野和樹、野口理沙子、山本直樹、天野 託 

(Received:9 May 2022/Accepted:11 July 2022)


デュロキセチン(DUX)はうつ病性障害の治療薬で、セロトニンとノルアドレナリン再取り込み阻害剤し、シナプス間隙のモノアミン濃度を上昇させることにより、うつ病害の症状を改善すると考えられている(モノアミン仮説)。それ以外に、うつ病は脳内の炎症が重要な要因であるとも考えられており、その一つに脳内の免疫反応に関与していることが知られいるミクログリアがある。ミクログリアはストレス刺激によって活性化され、炎症性サイトカインを産生することから、ミクログリアによる脳内炎症のうつ病発症への関与が示唆されている。本論文はミクログリア細胞株(BV-2)において、LPSによるNO産生は、DUX処置により濃度依存的に低下し、LPSによって増加したiNOS、リン酸化IκB-αとリン酸化AktとAktの発現レベルは、DUX処置により濃度依存的に低下した。しかし、LPS存在下に対するDUX処置は、COX-2などのプロインフラマトリー因子の発現や、IκB-αやAktのリン酸化比に対する影響は認められなかった。以上のことより、DUXには従来のSNRIとしての薬理作用に加え、iNOS発現抑制を介したNO産生抑制作用による抗炎症作用も抗うつ効果に寄与している可能性が示唆された。

 

救急入院した統合失調症1011例における抗精神病薬のリアルワールドでの有効性:1年間の前向き追跡研究

(Real-world effectiveness of antipsychotic treatments in 1011 acutely hospitalized patients with schizophrenia: A one-year follow-up study.)

八田耕太郎、片山成仁、石塚卓也、須藤康彦、中村満、長谷川花、藤田潔、森川文淑、今井淳司、三澤史斉、渡邊治夫、島田達洋(※)、尾崎茂、杉山直也 

(Asian J Psychiatry. 2022 Jan;67:102917)


 

抗精神病薬の持効性注射剤、抗精神病薬とクロザピンの併用療法のリアルワールドでの有効性を調べるために、2019年9月~2020年3月に当院を含む12の精神科病院に救急入院した統合失調症患者1011人の治療の失敗(退院1年以内の再入院、死亡、治療中断、1年以上の入院)を調べた。持効性注射剤の治療における治療の失敗のリスクは、ハザード率0.810:95%信頼区間(0.656-0.996)、クロザピン併用療法ではハザード率0.829:95%信頼区間(0.695-0.990)と有意に低かった。

 

 

矯正施設長通報により栃木県立岡本台病院に措置入院した症例の特徴と転帰

島田達洋

(第15回日本司法精神医学会大会 2019年6月7日)


2012年からの6年間に矯正施設長通報により栃木県立岡本台病院に措置入院した症例22例について調査した。男性68%、女性32%、平均年齢44歳だった。ICD分類ではF2:43%、F1:32%、F0:14%、F6:7%、F7:4%で、重診断が68%だった。違法薬物の乱用55%、発病前の素行不良59%、中卒88%、暴力犯26%、財産犯30%、薬物犯22%で、前科前歴91%、服役中に精神症状と問題行動を認めたものが64%だった。退院した症例の措置入院期間の平均は161日で、2例が2000日を超えて入院を続けていた。隔離実施率100%、身体拘束実施率23%、電気痙攣療法実施率23%、生活保護申請73%だった。観察期間内に予定帰住地に退院できたものはごく少数だった。このように、治療、リスク管理、ケースワークを濃厚に行う必要がある症例を一定の割合で認め、医療機関の負担は大きいものだった。矯正施設側、医療施設側両面での体制整備が望まれる。

 

 

栃木県立岡本台病院における措置入院の実践と課題

島田達洋田崎仁美柘植雅俊

(精神科救急. 第21巻、33-37、2018)


栃木県における精神科救急は6か月以内に受診歴のあるケースは受診歴のある病院が、受診歴のないケースの外来診療、任意入院、医療保護入院は輪番病院と岡本台病院が、緊急措置入院、措置入院、応急入院は岡本台病院が行うことになっている。2016年度の精神科救急情報センターの振り分け対象339件のうち、振り分け先は岡本台病院308件、輪番病院29件だった。このうち緊急措置診察になったものが216件(うち緊急措置入院になったものが105件)、医療保護入院が12件、外来のみが79件だった。

2016年度の岡本台病院の夜間休日の救急医療588件の内訳をみてみると外来診療のみが353件60%、緊急措置入院が104件18%、日中に措置が決定して夜間に入院となったものが88件15%、医療保護入院が36件6%、任意入院が7件1%だった。

2016年度の新規措置入院192例のうち年齢では40歳台が45件と一番多く、男性は113件(59%)で男性が多かった。診断はF2(統合失調症圏):60%、F3(気分障害):20%、F6(パーソナリティ障害):6%、F1(物質使用障害):5%、F0(器質性精神障害):3%、F7(知的障害):3%、F8(発達障害):2%の順だった。2016年度の新規措置入院の2017年10月15日時点での転帰は、他の精神科医療機関に後方移送されたものが49%、措置解除と共に退院となったものが20%、他の入院形態に変更してから退院となったものが26%、措置入院を継続している者が3%、他の入院形態で入院を継続している者が2%だった。

栃木県の精神科救急医療では岡本台病院への過度の集中がみられた。岡本台病院のかなりの部分を緊急措置入院を含めた措置入院が占めており、措置入院は精神科救急の重要な役割を果たしていた。

 

※ 下線部:栃木県立岡本台病院職員