クロザピン・修正型電気けいれん療法
クロザピンによる統合失調症治療
統合失調症は人口の0.8%が発病する精神科の病気です。かつては治療法がない病気で、症状が急に悪くなる時期を繰り返すごとに自発性が低下し、考えの筋道が作れなくなり、幻覚や妄想などが次第に悪化していきました。その結果社会生活も日常生活も自分でできなくなって、入院生活が数十年続くこともありました。
現在は「抗精神病薬」と呼ばれる薬で治療できるようになり、薬自体も副作用が出にくく、服薬を続けながら社会生活が送れるように改良されてきました。薬の種類も増えており、有効な薬が見つかる患者さんが大半となりました。以前であれば長期に渡って入院を続けなければなりませんでしたが、今や患者さんの3分の2以上が少量の薬を続けることにより働いたり、家事や育児や介護に活躍されています。
しかし、薬を変えても効果がない患者さんや、効果はあってもつらい副作用が出て使えない患者さんもいらっしゃいます。かといって治療できないままでは症状が悪化して生活に支障が出てしまいます。クロザピンはこのようないくつかの薬で効果が出ない(治療抵抗性)統合失調症の患者さんにだけ使うことができる抗精神病薬です。
クロザピンは副作用が他の薬とかなり異なり、中には放置すると危険な場合もあります。使い始めに心筋炎がごくたまにありますし、身体を細菌から守る働きをする細胞(好中球)が急に減ることもあります。糖尿病になりやすくもなります。使い始める時は入院して健康状態を観察しながら治療することになっています。また内科の医師とよく相談し、定期的に血液検査をして使わなくてはなりません。一方で治療効果は他の薬よりも非常に優れていることが分かっています。
当院では自治医科大学附属病院と協力してこの治療を行っています。令和4(2022)年1月時点で、累計52名の方に治療を行っており、入院と外来併せて31名の方が継続中となっています。いろいろな薬を使っても症状が良くならず長期入院されていた方がこの治療を通して退院して自立した生活を送れるようになったり、自宅で安定して生活できたりしております。
当院はより多くの困難な病状を抱えた患者さんのために、このような治療法にこれからも積極的に取り組んでいきます。
修正型電気けいれん療法
修正型電気けいれん療法(以下、m-ECTと表記)は昭和13(1938)年以来、多くの患者さんに行われている精神科専門療法です。額から電気刺激を与えることで脳の中にけいれんと同じ変化を起こし、脳機能を改善しようとする治療法の一つです。
さまざまな原因で起こるうつ状態、そう状態、昏迷状態、精神運動興奮状態、幻覚妄想状態などに対し効果があります。また、パーキンソン病での幻覚妄想状態、うつ状態にも効果が期待されていますし、一部の慢性疼痛にも効果があるとされています。m-ECTは薬物療法など他の治療法に比べて即効性があり、副作用が少ない治療です。
当院では年間300件を超えるm-ECTを行い、特記すべき合併症もなく安全に行っています。また、維持・継続的にm-ECTが必要な方は定期的に短期入院をした上で安全に配慮して行っています。